公務員の数と人件費はどれくらいだろうか

国の予算がどうなっているのかを考える前に、「大きな政府小さな政府」論の基本に戻る。よく話題になるのは、公務員がその国でどれほど大きな割合を占めているかだ。これに関しては、内閣府社会総合研究所が昨年8月に公開した調査がある。といっても中身の成果物は、野村総研の手によるものだったりする。ここにも官製経済がひょっこり顔を出している。


公務員数の国際比較に関する調査(内閣経済社会経済研究所)
http://www.esri.go.jp/jp/archive/hou/hou030/hou021.html


日本の公務数は約538万人人口1000人あたりでは42人、となっている。さらに公益法人自治体の非常勤職員を加えると、1000人あたりの割合は7人程度増加する。つまり1000人あたり約50人、国民の20人に1人が、行政に関わっている。人口1000人あたりの国際比較では、イギリス98人、アメリカ74人、ドイツ70人、フランス96人となっており、日本の公務員数はかなり低い水準となっている。比較の表を眺めて目につくのは、日本の公務員に換算されている、公社・公団、政府系企業の職員が意外に少ないということだ。この公社・公団とは日本郵政公社、政府系企業には、非特定独立行政法人特殊法人の職員らが含まれる。フランスはこの部分の数字が多い。アメリカはゼロ。ドイツは、このカテゴリーがかなり多い。


でも人数だけとりあげて、日本は公務員は少ない、という意見は聞き飽きた感がある。要はコストではないだろうか。次はこのデータの公務員の人件費による国際比較も見てみよう。対政府歳出比率では、日本は17%、イギリス19%、アメリカ28%、ドイツ16%、フランス26%が人件費を占める。対GDP比になると日本は6%、イギリス、ドイツ8%、アメリカ10%、フランス14%である。ここで思い出したいのは、人口1000人あたりの公務員数で、日本は42人、イギリス98人、アメリカ74人、ドイツ70人、フランス96人であったということで、相対的に見て日本の公務員の人件費が極めて高いことになる。イギリスと比べると公務員一人当たりのコストは約2倍にもなっている。EU諸国では公務員の給与は、日本のそれと比較して、相対的にかなり薄給のようだ。つまり「大きな政府小さな政府」論では、単純に公務員数だけ比較して日本は少ないから「小さな政府」だという論陣を見かけたらマユツバもので、人件費で比較すれば、一人当たりのコスト高が浮き彫りになってくる。

国の資産はどれくらいだろうか

国にとって公務員はフローの資産と言えなくもないが、「大きな政府小さな政府」論で、忘れてはならないのが、ストックとしての国の資産。行革推進本部では平成17年、国の資産の圧縮を強化するため、今後10年間で対名目GDP比で半減を目指すとする資料が作成されていた。


今後の行政改革の道筋〜行政改革推進法に基づく具体的取組〜(行革推進本部)
http://www.gyoukaku.go.jp/siryou/souron/pdf/0817_michisuji.pdf


この表によると、平成15年度末決算ベースで、国の資産は695.9兆円とある。政府試算の対GDP比の規模はアメリカと比較して5〜10倍になるという意見がある。(アメリカには連邦信用計画という制度があり、その残高158兆の多くが資産計上されていないといった事情があり比較しにくいというが) 例えば猪瀬直樹著『持続可能なニッポンへ』の中の記述によると、日本の政府資産は対GDP比で139%、アメリカのそれは12%、だという。日本は国土の4分の1が国有地で、河川や道路、港湾をあわせると国土の半分近くになる、しかも官舎、物納される相続物件など、有効活用されていない資産を大量に保有しているとのことだ。こういった政府の資産は、明らかに「大きな政府」を感じさせる。