補助金の規模はどれくらいだろうか

さて補助金とは、法律によれば、 補助金、 負担金、 (利子)補給金、 その他給付金などとなっている。実際は、地方交付税交付金、援助金、国際分担金などが補助金の領域の入る。膨大な補助金のガイダンス本として補助金総覧という本が毎年発行されているようだ。助成金マニュアルという本を図書館で見かけたことがあるが、あれのタネ本になるものだろう。補助金は国だけが支出するわけではなく、地方公共団体も支出するし、支出された先の、独立行政法人認可法人、といったお上にぶら下がっている団体も、民間の事業者に支出している。


とりあえず、その規模をイメージするために、国の予算を見てみよう。毎年当初予算編成が発表されるたび、新聞でみる円グラフがある。以下のサイトに、国の一般会計歳出額内訳なる円グラフがある。この年、平成18年度当初予算の歳出総額は約79兆7千億円である。


データ集:税の学習コーナー[発展編](国税庁
http://www.nta.go.jp/category/gakusyu/hatten/print_17.html


まず、おさらいとして先に考察した社会保障関係費公共事業関係費の規模を見ると、それぞれ約20兆6千億円で25.8%、7兆2千億円で9%、合計して一般会計の約35%を占めている。一方、ここではっきりと補助金に相当するのは、地方交付税交付金が約14兆5千億円で18.3%、経済協力費が約7.2千億円である。合わせて20%弱は、確実に補助金と呼べるだろう。もちろんこの中には、本当の公共事業と同じように、資材として使われる物品の費用が多分にある。しかし人件費も含まれているはずだ。(経済協力関係費は日本の国民に還元される部分は少ないはずだが。)さらにこのグラフからは、内容が読み取れない「その他」の額が、約6兆8千億円、8.5%分ある。ここにも補助金は潜んでいるかもしれない。


以上、一般会計における公共事業と補助金の規模をみてみて、その官製経済の規模をイメージしてみた。しかし考察がこれだけにとどまっていては、もちろん中途半端だ。国の予算には一般会計の規模をはるかに超える、特別会計の領域があるからだ。一般会計からの特別会計へ繰り入れられていくお金が、公共事業関係費や地方交付税交付金「等」に含まれている。新聞で見かけるような一般会計の円グラフと違って、実際の国のお金の流れは、特別会計をみなければわからない。下の資料によると、一般会計の歳出、79.7兆円のうち、一般会計歳出の純計は33.4兆円で、それよりも多額の46.3兆円が特別会計に投入されているのだ。


平成18年度国庫(一般会計・特別会計)予算の概要(純計)(財務省
http://www.mof.go.jp/zaisei/junkei_graph.pdf
http://www.mof.go.jp/zaisei/

働く契約には職務内容記述書が必要

Yahoo!ニュース - 毎日新聞 - <残業代ゼロ制>安倍首相が国会提出断念を明らかに
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070116-00000104-mai-pol


ホワイトカラー・エグゼンプションは見送りになってしまった。そもそもネーミングが悪かったし、高額所得者裁量労働制にでも名前を変えて出直しだ。40代後半で年収1900万円にも達する朝日新聞らメインストリームのマスコミ連中が法案を残業代ゼロ制と名づけ、庶民いじめの法案であるかのように読者層におもねったキャンペーンをはり、それに労働組合運動するような既得権者らが乗った時点で、まともな議論はダメになってしまった。この間、目にした議論から雑感を記す。JMMの1月13日号、冷泉明彦氏の『from 911/USAレポート』は「雇用システムへの信頼」と題した文章だった。以前の号の「アメリカの制度をマネするな」と題した文章とあわせて読むと、以前当ブログがホワ・エグについて書いたエントリーは勉強不足だったかなと感じた。アメリカのホワ・エグ対象者の厳格な要件が紹介されていていたからだ。だが、ホワ・エグを基本的に了承した労働政策審議会の方向性は間違っていないとも改めて思った。冷泉氏は基本的に日本の雇用慣行を批判的にみており、アメリカ型雇用慣行にすることを「相当部分よいように思う」と書いている。ただ今回のホワ・エグ導入の議論には不誠実がある、という論調になっている。文章は、年収要件900万円の影響を受ける人はまれだと検証する一方、「数字を高くして対象者を限定すれば国民が納得するだろう」という政界・財界の国民をなめた姿勢を難じる内容となっていた。


冷泉氏の文章では、アメリカの雇用慣行を紹介するなかで、ジョブ・ディスクリプション(職務内容記述書)についてふれられていた。「その人は仕事として何をすればいいのか、誰の支持を仰げばいいのかということが文書化されたもので、採用の時点でも、毎年の年俸改訂の際にも、昇格や異動の際にも必ず見直して合意の上、本人がサインしなくてはなならない」文書。そう、これが存在していないことは日本の労働市場の重大な欠陥だ。入社する会社でいったい何をすることになるのか、残業の実態はどうなのか、入ってみるまでわからないのがこれまでの就職のあり方だった。職務内容どころか年功的賃金の行方を含め、さまざまな報酬すらブラックボックスのまま就職に至るのが一般的だった。労使両者に契約の観念が希薄すぎた。労使間にあまりに情報の非対称性があって、基本的に働き手は弱い立場に置かれてきた。新しく制定される労働契約法のなかに、厳格な職務内容記述書の義務化が盛り込まれればいいと思う。