働く契約には職務内容記述書が必要

Yahoo!ニュース - 毎日新聞 - <残業代ゼロ制>安倍首相が国会提出断念を明らかに
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070116-00000104-mai-pol


ホワイトカラー・エグゼンプションは見送りになってしまった。そもそもネーミングが悪かったし、高額所得者裁量労働制にでも名前を変えて出直しだ。40代後半で年収1900万円にも達する朝日新聞らメインストリームのマスコミ連中が法案を残業代ゼロ制と名づけ、庶民いじめの法案であるかのように読者層におもねったキャンペーンをはり、それに労働組合運動するような既得権者らが乗った時点で、まともな議論はダメになってしまった。この間、目にした議論から雑感を記す。JMMの1月13日号、冷泉明彦氏の『from 911/USAレポート』は「雇用システムへの信頼」と題した文章だった。以前の号の「アメリカの制度をマネするな」と題した文章とあわせて読むと、以前当ブログがホワ・エグについて書いたエントリーは勉強不足だったかなと感じた。アメリカのホワ・エグ対象者の厳格な要件が紹介されていていたからだ。だが、ホワ・エグを基本的に了承した労働政策審議会の方向性は間違っていないとも改めて思った。冷泉氏は基本的に日本の雇用慣行を批判的にみており、アメリカ型雇用慣行にすることを「相当部分よいように思う」と書いている。ただ今回のホワ・エグ導入の議論には不誠実がある、という論調になっている。文章は、年収要件900万円の影響を受ける人はまれだと検証する一方、「数字を高くして対象者を限定すれば国民が納得するだろう」という政界・財界の国民をなめた姿勢を難じる内容となっていた。


冷泉氏の文章では、アメリカの雇用慣行を紹介するなかで、ジョブ・ディスクリプション(職務内容記述書)についてふれられていた。「その人は仕事として何をすればいいのか、誰の支持を仰げばいいのかということが文書化されたもので、採用の時点でも、毎年の年俸改訂の際にも、昇格や異動の際にも必ず見直して合意の上、本人がサインしなくてはなならない」文書。そう、これが存在していないことは日本の労働市場の重大な欠陥だ。入社する会社でいったい何をすることになるのか、残業の実態はどうなのか、入ってみるまでわからないのがこれまでの就職のあり方だった。職務内容どころか年功的賃金の行方を含め、さまざまな報酬すらブラックボックスのまま就職に至るのが一般的だった。労使両者に契約の観念が希薄すぎた。労使間にあまりに情報の非対称性があって、基本的に働き手は弱い立場に置かれてきた。新しく制定される労働契約法のなかに、厳格な職務内容記述書の義務化が盛り込まれればいいと思う。