EU労働法政策雑記帳: 請負労働の本当の問題点は何か?
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_3aa0.html
http://www.rengo-soken.or.jp/dio/no218/houkoku_2.pdf
連合総研機関誌「DIO」7月号掲載の濱口桂一郎氏の論文。ジャーナリズムと政治の場で蔓延する偽善性に斬り込む鋭い視点。こういう論考こそ待っていた。こういった視点をもつ学者の人に、主に請負で働く、労働者としての従属的自営業者に対するあるべき権利保障について、構想を展開して欲しい。そうすればそれは、組織に属す以前の、労働市場に参画する働き手に普遍的に保障すべき労働者としての権利保障の構想へと展開するだろう。労働者にとってミニマムに保障するべき権利をめぐって議論が深まれば、労働法制を再編していくときのフォーカル・ポイントとなりえる。既存の労働法制を前提とした権利擁護ばかりを強弁する者は、単なる法の形式論にとらわれた視野狭窄者にすぎない。以下重要部分引用。

しかし、派遣も請負も不安定な間接雇用であるという点では変わらない。偽装請負はけしからんから適正な派遣にせよと主張することで、労働者本人にいかなるメリットがあったのだろうか。彼らの常用雇用化を主張するのであれば首尾一貫するが、それを義務づける根拠規定はない。派遣の場合3 年経過による雇入れ申込み義務が存在するが、有期雇用として採用するのであればフリーターから脱却したとは言い難い。
(中略)
現行法制が派遣と請負の峻別論に立脚している以上行政がその方向で動くのは当然だが、マスコミが過度のリーガリズムで二者択一の議論を展開していくことは、政策をミスリードする危険性を孕んでいる。現在の請負労働に問題があることは言うまでもないが、適正な派遣にすればよいというものではないはずである。
(中略)
戦後職業安定法はこの労務供給請負を全面的に禁止する一方で、それに当たらないとされた事業請負を労働法規制から免責してしまったということもできる。
(中略)
現行派遣法では、労働時間や安全衛生など一定事項について派遣先に使用者責任を負わせる一方、派遣でない請負であれば一切その責任を負わないという考え方に立っている。
(後略)