Rimo雑感

はてなが開始した「新しいテレビ」Rimoはてながついに旧態依然たるエスタブリッシュメント銃口を突きつけ始めたと解釈していいのだろうか。すぐに連想したのは、有線放送のサービスやプロモ音楽有料放送との競合だ。今後、著作権管理団体も黙っていないだろう。もしRimoの影響力が順調に伸びるようなら、著作権処理をまともにやっているオールドメディアの業態はコスト的にかなわない。現状、厳格な著作権管理に従えばポッドキャストトーク番組の背景で音楽を流すことすら出来ないのに、YouTubeコンテンツの間借りを理由にして、ここまで大胆なメディアをつくってしまったことに驚く。梅田望夫氏が、このサービスについて自身のブログで一切の意味づけを語っていないことが、あまりにも雄弁に、このサービスの破壊性を物語っている。番組は垂れ流しで、前のコンテンツに「戻る」ボタンもなければ、検索も不可。操作性をわざと不便なままに留めている設計に逆に深謀遠慮を感じる。

とりあえずこういうサービスが実現可能ですよ、とサービスのプラットフォームを公開してしまって、あとから権利者らと関係性をつくっていくスタイルは、これまで日本の事業者はやっていないのではないか。Rimoは、コンテンツはあくまでもYouTubeにあり、はてなが提供しているのは、あくまでメディア(媒介)です、という設計になっているが、このコンテンツに我関せずのスタンスは、グーグルのスタンスと酷似している。これは広告を載せていくメディアとして、かなりの潜在的訴求力をもっている。

このサービスは、かつて有線放送が電柱に勝手に違法で有線網をはりめぐらせ事業拡大をはかった歴史を連想させる。類似したサービスが、同じような手法の大胆さでもって登場したのは、歴史の因果だろうか。かつて梅田氏はウェブサービス構築のスタイルとして、公開を先行させることの有益性を語っていたことがあった。それをはてなは有言実行してみせたわけで、素直に驚嘆してしまうし、これからのオールドメディアとのバトルの行方に目が離せなくなってきた。はてな恐るべし。

情報集約型の出版物が消えて行く

2月に入り、生活情報センターという出版社が倒産してしまった。官庁やシンクタンク、企業による統計や調査、アンケートなどをまとめた大型本を出版していて、書きもののときや情報提供するときに重宝した。このタイプの大型本を、この出版社は最近各年で発行しようとしていて、総務省の統計データポータルサイトができた時期とも重なっていたので、採算はとれているのだろうか、と疑問に思ったこともあった。自分が目にした範囲では、けっこう資料としていい本もあったけれど、市場でさばけるタイプの本ではなかった。図書館売り程度しか出来ず、行き詰ったのかもしれない。

企業倒産のウラには何があるかわからないので理由は特定できない。でも、いい本をつくっても利益が出ない時代の流れはある。特に調査や研究をまとめた本は、手間がかからないようでいて、見せるためには統一感ある編集をしないといけないし、そこが一番の付加価値なのに、その価値が認められにくい。情報源への支払いのコストも、流通経路に乗せるコストもかかる。情報を二次利用するタイプの出版社はこれからどんどん淘汰されそうだ。こんなことなら、官庁の外郭団体として、情報を二次利用した報告書を印刷しているだけの公益法人とかは、もっと淘汰されていい。そういうところのブツははなから編集を放棄している出版物も多い。まともな出版社が浮かばれない。

■統計データ・ポータルサイト
http://portal.stat.go.jp/