経済財政諮問会議がトーンダウンしているなか、規制改革会議の再チャレンジワーキンググループ、労働タスクフォースが21日の会議後に発表した意見書が、「労働ビッグバン」の急進派の提言だとして、なにかと話題だ。珍しく規制改革会議は情報を速攻でHPにアップしている。
‐規制改革会議
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/
‐脱格差と活力をもたらす労働市場へ〜労働法制の抜本的見直しを〜(PDF)
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2007/0521/item070521_01.pdf

これをめぐって八代尚宏氏と福井秀夫氏の立ち位置の差を読み解くべきとの所見。
EU労働法政策雑記帳: 規制改革会議さん全開
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_c279.html
国会でも話題にとりあげられ、厚労相が政府方針との齟齬に苦言を呈する展開。
‐規制改革会議の労働法制改悪意見書/厚労相「適切さ欠く」/小池議員質問
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-05-23/2007052302_03_0.html
ちなみに官邸の再チャレンジ支援室は23日に会議を開催。
http://www.kantei.go.jp/jp/saityarenzi/index.html


さて、一読してみて。流動性の高い労働市場の構築こそ再チャレンジ可能な社会になりうるとの基本線には異論なし。また判例法理の積み重ね、さらにその法制化が、真に労働者のためになっているとは言い難いとはっきり宣言した点は評価できる。既存の法制度の延長線上でしか労働者保護を考えない労働関係弁護士らの発想は、合成の誤謬しか生まない。さらに企業の雇用条件の細目の透明化を目指す発想もよい。

ただ労働市場の自由化を徹底しようとする視点にとらわれすぎていて、労働(雇用)の既得権を支えている制度は、労働法制だけでなく、それをとりまく各種保険制度や税制、年次管理型の企業内慣行といったトータルな制度にまで及ぶことへの視点が伺えない。労働市場に関わる意見書だから限定的な記述になりがちなのかもしれないが、その視点があれば記述ににじみ出てくるものだ。局所的に自由化を徹底することが、最適な人的資源の配分をもたらすことになるとは言えない。これまでと違った自由を労働市場で実現するには、これまでと違った制度的インフラが必要となる。

今回の意見書で違和感があったのは、まずは現状の最低賃金制度の妥当性に触れず、一般的に最低賃金引き上げに反対している点、厚生的な視野をもたず画一的な労働時間の上限規制に反対している点、全員加入型の職種別の労働組合が存在しないため(外部労働市場が機能しておらず)同一労働・同一賃金の実現は現実的でない、と企業内での公正さの実現すら目指していない点。また某所で得た知見だが、使用者側の義務や責任についての発想がまったく書き込まれていないことも不完全なものだと感じさせる要因となっている。