国民負担率と潜在的国民負担率

社会の貧困化が懸念され、新たなセーフティネットを模索するとき、その原資はどこから調達するか、という話になる。「小さな政府か大きな政府か」論争は、論者が使う言葉の理解しあっている概念に差があるので、ただ国家観の違いを確認するだけで終わりがちだ。基本的事実をデータで確認することからはじめたい。


政府の規模の話で、まず出てくるのが「国民負担率」という言葉。国民負担率とは国民所得に占める、国税地方税といった租税負担と、年金、健康保険といった社会保障負担をあわせ、国民所得に占める割合を示した数値だ。だが、行政の運営は、国債や地方債を発行することで、負担を将来に先送りしている分もあるため、国民負担率に財政赤字負担を加えた「潜在的国民負担率」をみなければならないという意見が一般的になってきている。政府は現在、その数字を50%以下に抑えることを目標にしている。国民負担率や潜在的国民負担率については、その推移と国際比較が財務省のHPで公開されている。


国民負担率(財務省
http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/futan.htm


こちらを見ると、平成18年、国民所得約376兆円、国民負担率は37.7%潜在的国民負担率は43.9%となっている。この国際比較では、両負担率ともにアメリカに次いで、国民所得比が小さくなっている。日本は小さな政府であると、しばしば言われる論の根拠となる数字だ。国民負担率の推移の表を見ていて気づくのは、*で示された注意書きの部分で、財政赤字負担がが一気に上昇する年度があること。これはそれぞれ国鉄長期債務、国有林野債務、本四公団債務の一般財源化によるとあるから、特殊法人など国の会計とは別立ての公共団体が民営化されたとき、その債務が潜在的国民負担率として顕在化していることを示す。一般会計とは別立ての特別会計部分に赤字があれば、それが将来的に財政負担として転嫁されてくるわけだ。


さらに、この財務省のHPで、財政赤字負担を算定するとき、地方の財政赤字まで含んでいるかはわからない。北海道夕張市財政破綻が明らかになったように、地方財政の悪化は危機的状況にある。地方財政も赤字だらけなのだが、こちらも普通会計だけでなく、国の特別会計にあたる公営企業会計があるので、本当の潜在的国民負担率は、どれほどになるか、現時点ではわからない。


そういった赤字をめぐる論点を掘る前に、国民負担が低いということ、つまり小さな政府であることは、逆に言えば、社会保障給付費が低いということでもある。次にそのデータを調べてみたい。