偽装請負内部告発者を隔離 松下子会社
http://www.asahi.com/special/060801/TKY200608050371.html
ひと月前のニュースながら今週の週刊東洋経済でも取りあげられているのを読んで、とんでもないことがわかったのでクリップ。松下プラズマディスプレイ(MPDP)を内部告発した人(期間工、この地位も闘って得たもので、もとは業務請負労働者)は不当な雇い止めをされていただけでなく、その告発の根底には会社側の不当な扱いがあった。以下週刊東洋経済から引用。カッコ内引用者付記。

吉岡さんがMPDPの直接雇用にこだわったのにはワケがある。請負労働者時代に担当したのは鉛の粘度調整を行う封着工程。同じ工程で働く正社員二人が特殊健康診断を受けたら血中の鉛濃度が上昇し、危険だとして担当から外れた。ところが請負労働者である吉岡さんにはその特殊健康診断の案内すら届かなかった。聞けばそれは請負会社の責任だという。だがパスコ(請負会社)にたずねてもその存在すらろくに知らずらちがあかない。結局受診をあきらめた。

正社員は人間、それ以外は人間以下として扱われる現実。この健康問題だけじゃなく、彼は請負社員であった段階でMPDPの要請によって賃金ダウンする請負会社への転籍を命じられている。それに応じなかったところ、期間工として雇い入れられることになり、差別的職務に就かせられたうえで、期間後に雇い止めになった。また父が亡くなり休暇をとると、休日日数に応じて換算する時給が減らされていたという。正社員なら忌引扱いされ見舞金さえ支給されることもあるのに。現在彼は差別的取扱いと不当解雇を訴え提訴中。5月には派遣会社の男性差別を訴え、筋を通している人もいた。労組を背景にとかではなく、個の思いを出発点に闘っている人が世の中にはいる。

偽装請負と竹中平蔵の間に

J-CAST ニュース : 役人に嫌われ続けた 竹中総務相の5年5カ月
http://www.j-cast.com/2006/09/15002981.html
一本釣りで政権入りして以来どれほど孤独だったろうかと思うと、お疲れさまと言いたい。辞任によって、今後安倍政権になるにせよ、もしも選挙を経て民主・小沢政権になるにせよ、小泉・竹中が一応は目指し、そして体現するかにみえた自由主義的路線が後退するのは避けられない模様。次期政権には「改革を続行」する芽が無きに等しいのが哀しい。議員職を投げ出すことを河野太郎がさっそく罵倒しているけれど、目指すことが実現できないと踏んだなら、その職にしがみつくよりも離れることのほうが、国民に対してよっぽど誠実だ。できることならなるべく早く自民党も離党して、民主党が政権をとったときに経済関係の大臣で政界復帰するぐらいの柔軟性をみせてほしい。でもここまで書いたのは好意的な解釈であって、ちらほら噂があるように当局に弱みを握られているから身を引いたと邪推することもできる。今後の展開は神のみぞ知る。


さて、不当な扱いを受ける請負労働者への共感と竹中平蔵への共感は僕の中で矛盾なく存在している。客観的には負け組に分類されるであろう自分のこういう心理はしばしばサヨクの人々から小泉政権に騙されている人間の心理だと評されている。小泉政権の一番の犠牲者たる都市型弱者が小泉を支持する理由がわからないなどともよく言われている。僕はカタルシスを求めるだけの噴き上がりの輩?の典型と分析されるかもしれない。でもそういう分析は何か違う。自分の場合、カタルシスを感じさせる靖国参拝だとか外交パフォーマンスのような政治イベントには全く共感も支持もしていない。支持できたのは経済路線の方向性だけだ。小泉・竹中の自由主義の結果、格差拡大が加速した面はある。でもそこには公正さへの希求があったと思えてならない。単純には説明できないが、ルールが明確であれば負けも納得できるという心理にかなう政治が見えたということではないか。最低限のルールすら守らない会社に制裁を求める心理、そして既得権でがんじがらめになった不透明な市場にルールを求める心理、それはひとつながりのものだと思う。自分は今のところ、この心理を説明してくれる論者を知らないし、クリアに代弁してくれる政治的回路も知らない。自分はおかしいのだろうかと日々虚空に尋ねるばかりだ。