労働CSR包囲網による労働運動

http://www.asahi.com/national/update/0408/TKY200804080324.html

http://www.seinen-u.org/sukiya.html
週刊東洋経済」や「週刊ダイヤモンド」でもとりあげられていた、会社側がアルバイトを雇っておきながら一方的に個人請負契約だと主張するゼンショーの「偽装雇用」の問題に新たな展開があったようだ。あまりにひどいので、すき家はもともと行ったことがないが、今後利用することもないなと思いつつ記事を読んだ記憶がある。本来、こんなものは労働基準監督署が事情聴取して速攻で指導し、制裁が課されなければなければならない事例だと思われる。が、会社側は痛手を負うこともなく、営業を続けているようだ。

すき家はテレビCMを見たことがあったので、労働組合(当事者)の闘い方として、考えていたことがある。労働組合のサイトをみると、各地のすき家の店頭で、宣伝活動をしているらしい。それはそれでいいとして、労働運動として、会社側との直接交渉、次いで公権力への訴えと経たら、さらに取引先の関係企業にも接触してみてはどうだろうかと考えていた。以下は、別にこの事例の労働運動に限らず応用できるもので、地味な作業でありながら、企業の社会的責任を問いただす方法として使われるなら、社会の透明化に資する方法だと思う。

例えば、すき家はタレントを使ってテレビCMを流しているので、タレントの所属事務所とテレビ局など広告関係の取引先を手始めに、ゼンショーが取引をしている関係企業に、ゼンショーの企業活動にどのような問題点があるかを伝え、それに対してどういう見解をもつか、今後どのような取引関係をもとうとしているのかを質問し、回答を求める。そして質問状と回答をウェブ上ですべて公開していく。ゼンショーの経営姿勢を関係企業が許容すると回答するにせよしないにせよ、ありのままを公開して、第三者が関係企業の企業倫理を検証できるようになればよい。周辺から圧力を加え、搦め手から攻めるのだ。

多国籍企業が途上国の企業と取引している場合、途上国側企業に児童労働や強制労働の実態はないのか、労働条件において人間的な働き方は確保されているのかを問う運動があるように、ひとつの企業内部で公正な労働が確保されているのかを問う重要性と同時に、取引先企業で公正な労働が確保されるているかも、企業の社会的責任と認識されるようになってきている。労働条件面での企業の社会的責任は労働CSRと呼ばれるわけだが、それを労使交渉の対象企業だけでなく、取引先企業にまで広げて求めていくことで、労働運動自体が、ひとつの企業を対象としたものから、社会的な波及効果をもった運動になっていくのだ。先の質問で、ウチの企業の問題ではないから関係ないと回答する企業は、労働CSRの意識が低いことが暴露されることになる。

企業別組合が基本の日本の労働運動は、基本的に個別企業内での労働条件の改善を勝ち取れば、そこで運動は急速にしぼんでしまう。すき家の問題を追及している労働組合は、サイトを見ると、個別企業での分会は作らないらしい。そうした、労働運動とは企業の枠を超えて追求されるべき活動だと自覚している労働組合は、貴重な存在だ。労働組合の社会的責任を果たすという発想に立つなら、組合活動は必然的に個別企業を超えていくものではないだろうか。もし上記のような運動が広がっていくならば、企業に労働CSRの内部統制を整備させる契機になるのではないかと夢想する。