なぜEITCは世帯単位で想定されているのだろう?

http://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/kawaguchi/01.html

還付可能な税額控除制度が企業に対する賃金補助よりも魅力的なのは、世帯単位の所得をもとに控除額を決めることで貧困世帯の労働者を狙い撃ちできる点である。もっとも実行にあたっては世帯単位の所得を正確に補足する必要があるので納税者番号の導入が不可欠となろう。

給付付き税額控除(EITC)の導入をすすめる議論がメジャーになってきた。個人的に気になったのは、引用部。自分が知る限り、この制度について日本で紹介されたり検討されたりしているもので、世帯単位の所得を対象に給付付き税額控除を考えるという議論しか目にしていない。でも、なぜ個人単位の給付付き税額控除という構想は語られないのだろうか。(一人世帯という概念も承知していますが)

まもなく東京財団子育て支援のための給付付き税額控除が政策提言されるはこびで、そこでも子どもを抱えた世帯が、この制度を通して支援すべき対象として想定されている。確かに子育てのコストは少子化の一因かもしれないし、働くほうが貧しくなりかねない母子家庭のおかれた状態は救済されるべき課題だが、いまの時代に問題となっている貧困とは、子づくりをする契機すらもちえない個人の貧困への支援ではないだろうか。

そもそも給付付き税額控除は、納税者全般の就労や社会参加への促進が大義とされる制度のはずで、はじめから子育てのような特定の目的を想定して制度導入の理由づけとするなら、これまでの控除や助成の施策とあまり変わらなくなってしまう。ちなみに納税者番号制は、個人の所得の正確な捕捉を目的とするもので、個人を救済の基点と考える発想に、制度としてなじむ。世帯単位を救済の対象としなくても、個人の救済のためにも、納税者番号制は不可欠だろう。