記者クラブ無効化のために

また朝まで生テレビの話になるが、メディアに関して気になる発言があった。手嶋龍一氏が、記者クラブのような談合組織があるのは日本とアフリカの強権国家一国だけだと発言していたが、このアフリカの強権国家はどこを指すのだろうか?いずれ解明したい。 
さて記者クラブといえば、行政発の情報をヨコからタテにするだけの発表ジャーナリズムの温床だが、最近関連してつらつら思っていたことがある。グーグルニュースで行政による政策や統計の発表をメディアが記事化したものを見ていると、同内容のことを扱った記事リンクが関連記事として、いくつも並べて表示される。そうしたことが実現されるようになったことで、複数のメディアの記事を見比べられるようになり、内容が同じじゃないかとか、微妙に違うなとか、比較検証できるようになった。元共同通信編集主幹の原寿雄氏が著書『新聞記者の処世術』のなかで、発表もの記事が報道全体のほぼ9割を占めていると書いていたことがあったが、ようやくマスメディアがいかに情報の横流しだけで商売しているかが可視化されるようになってきた。違うなという部分は、記者や媒体の問題意識の反映で、それは一次情報をもとに論評として発信すべき範疇の情報だ。
もちろんグーグルニュースに参加せず撤退したメディアもあるので、単純に可視化が進んでいるとはいえない。しかし同じことを横並びでやってるマスメディアがどうしてこんなに多数あるのか、と疑問に感じる程度には可視化されてきている。ヤフーニュースでは現在、行政が情報源となったそうしたニュースを日々のトピック記事として取り上げる場合、そのニュースに対して人力で行政の情報源にリンクを貼っている。それはそれで重宝しているのだが、一方で、グーグルニュースに行政の情報源への直リンクが反映されるようにならないだろうかといつも思う。例えば、行政と同様、重要な情報源としての日本経団連のサイト発の情報は、一部グーグルニュースに対応していて、同内容を記事化したメディアの記事と同時に見比べられるようになっている。そうした動きは加速するばかりだろう。
行政はなんらかの発表をするとき、「報道資料」と称して内容を読みやすくまとめたものを同時に発表していることが多い。そういった情報源そのものがグーグルニュースに直リンクされて反映されることを望みたい。行政が検索エンジンにひっかかりやすいよう情報発信して欲しいのだ。経済財政諮問会議はサイト情報を更新するとき、RSS配信しているので、そういったシステムが多くの省庁に普及すればよい。さらに行政は、特定のキーワードを指定して登録しておけば、行政発の情報を一定の期間ごとにひとまとめにしてグーグルアラートのようなかたちで、個人に情報提供するサービスを行なうことも可能なはずだ。メールマガジンを配信している省庁があるが、それらはいずれRSS配信を行なうサイトとしても情報発信するだろう。
ともかく、発表ものをそのまま記事化するだけのメディアの存在を中抜きすることが可能な技術的環境は、すでにある。あとは行政がメディアとの共依存関係を断ち切り、市民と直接コミュニケーションする道に踏み出す意志があるかどうかだけだ。政府インターネットテレビのような編集された広報的意味合いの強い情報発信もあっていいが、まずは行政発の一次情報を個人に届ける努力をして欲しい。記者クラブを無効化するには、クラブ構成員の倫理観や良心に訴えてもあまり効果はなく、直接、行政に情報が欲しいと訴え、行政の情報発信のシステムの改革を求めることが早道だ。年頭に日本経団連が世界最先端の電子政府の構築を提言していたが、現時点でできることはいくらでもある。ここでも精神論よりもシステムの改革に目を向けたい。