来年度から従業員の雇用形態を非正規から正規に転換させた中小企業に奨励金を出すという。正規雇用を持続的に拡大できた企業に頑張ったで賞をあげるということで、恩恵を受けられる対象として5000人が想定されている。最近役所の政策は、インセンティブと言えば聞こえがいいが、ごく少数の限られた人間だけが恩恵を受けられる政策が多くなっている。なぜ厚労省は弱者を救済するとき、個人に金を投下せず、法人に、つまるところ業界に、金を投下するのだろうか。個人に金を投下しても業界は生まれず、天下り先が作れないからではないか。こういった既存の企業で実現される正規雇用に金を投下する政策は、わずかばかりの予算をつければ目の前の小さな正義は実現できるのかもしれないが、より広い視野で見た労働者のための政策が毀損されているように思えてならない。かつてグリーンピアの建設が乱発された愚策と印象はほとんど変わらない。日経BPのサイトでソリューションとデザインという言葉を対比させた宮田秀明氏の論考を読んだこともあって、最近の役所はメリハリをつける予算などと理由をつけては、無意識に役所の存続を狙ったその場しのぎの政策が打ち出され、大所高所に立つ政策が失われているとの感を改めてもった。

  • asahi.com:正社員への転換、奨励金で後押し 厚労省、来年度から - 暮らし

http://www.asahi.com/life/update/0830/TKY200708290332.html

 厚生労働省は08年度から、契約社員期間工ら有期雇用の労働者を正社員として採用した中小企業に対する奨励金制度を設ける。1企業当たり最大135万円を支給し、初年度で約5000人の正社員化を目指す。
 対象は、一定の経験年数があったり技能を習得したりした有期雇用の労働者を、正社員に転換することなどを就業規則で定めた中小企業。1人を正社員にすると35万円を支給し、その後2年以内に3〜10人を正社員化すると、1人につき10万円を支給する。
 また、厚労省は来年4〜5月、有識者らによる研究会で、有期雇用の労働者の正社員化に関する指針を策定。正社員への転換を進めている企業の事例集も作る。
 来年4月施行の改正パート労働法では、正社員より労働時間が短いパートについて、正社員への転換を進めることが企業に義務づけられた。だが、正社員と同じ時間働く有期雇用の労働者は同法の対象ではなく、法律とは別に奨励金や指針で正社員化を後押しする。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/09/post_436d.html

http://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/08gaisan/syuyou.html
第2 成長力の底上げに向けた雇用対策・職業能力開発等の推進
第3 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)と公正かつ多様な働き方の実現
*この3章に上記記事に関連する予算の記述がある。(再掲)とあるのは2章に記述がある。

(4)有期労働者の処遇の改善等 8.1億円
○ ガイドラインの策定や正社員転換支援を通じた有期労働者の雇用管理の改善 4.8億円
契約社員期間工等の有期契約労働者の雇用管理の改善を図るため、ガイドライン等を作成し周知するとともに、有期契約労働者から正社員に転換する制度を設け、正社員に転換させた事業主に対する助成制度を創設する。
(5)パートタイム労働者の均衡待遇確保と短時間正社員制度の導入促進 (再掲) 10億円

  • 年金問題が象徴する日本社会の大いなる課題 (宮田秀明の「経営の設計学」):NBonline

http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20070831/133724/?P=3