どのようなニュースの引用なら許されるのか


佐藤正久参議院議員の駆け付け警護発言をめぐって、その発言の当否はいったん置く。関心があるのは、こういった政治的に争点となりそうなニュース映像があるとき、この映像に公益性があると判断した個人が、YouTubeなどのビデオ投稿サイトに映像をアップロードすることは許されるのか、さらに、こういった映像の引用をもとにウェブ上で論評や議論がなされているとき、放送局が削除依頼を出すことは妥当か、ということだ。 従来の常識からすれば、映像の制作者である放送局は、削除依頼する権利がある。しかし放送局は、公共的価値がある機関と目され、さまざまな特権を享受しているのであって、公益性に奉仕する使命を帯びているとする建前がある。放送の公共的役割を強調すればするほど、ニュースのような視聴者を選ばない公益性の高いコンテンツに、局自らの著作権を主張する根拠が薄らぐと考えるべきではないか。 これは、テレビ、ラジオ、新聞といった大手メディアが発信するコンテンツ全般に通じる問題だ。大手メディアが自らの公共性を強調すればするほど、自ら発信するコンテンツの占有性を主張できなくなる状況が生じるのではないか。将来、情報発信の段階で、情報の利用可能性を、発信者が設定するようになるのかもしれない。なんだかクリエイティブ・コモンズの構想そのものと通底するのだが、こういったコンテンツの性格を切り分けて考える作業は、個人よりも放送局のような公共機関が率先して考えるべき課題のような気がする。