在宅勤務と労働関係法

http://www.keizai-shimon.go.jp/special/work/10/agenda.html
三週前の会議。小嶌典明大阪大学大学院教授が提出した「在宅勤務と労働関係法」という資料にもとづいた会議。在宅勤務の典型例として、情報通信機器を活用した在宅勤務と家内労働、つまりSOHO型の働き手や委託による内職に従事している働き手の労働者性をどのように考えればよいのかが議題になった模様。資料は、労働基準法の規定する「労働者」の判断基準を例示、既存の労働基準法の適用ではそれらの働き手を護るのに限界があるとことが示唆されている。在宅勤務者に労働者性を見出すとき重要なのは、仕事の委託先にいかに多面的に従属しているかということ。多面的な従属性の判断には、労働基準法に定める「労働者」の判断基準が参考になるとして、細目が列挙されている。

労働基準法に定める「労働者」の判断基準
1「指揮監督下の労働」に関する判断基準(「使用される者」であるかどうか)
2報酬の労務対償性の有無(「賃金を支払われる者」であるかどうか)
※補強要素: 事業者性の有無、専属性の程度等

ただし労働基準法を在宅勤務にあてはめようとしても、杓子定規にあてはめるのでは無理があり、そのメリット・デメリットもあげられている。なかでもデメリットとして、時間に縛られない自由な働き方ができなくなるとして、事業場外のみなし労働時間制の観点から在宅勤務の働き方をみていくことの可能性が指摘されている。みなし労働時間制に関しては、労働基準法38条の2が規定している。明確に労基法の適用を受ける在宅勤務の場合にはガイドラインが存在し、そこにある考え方から可能性をさぐることになる。

労基法 第38条の2 労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。

従事者が平成17年で20万人ほどの家内労働に関しては、家内労働法というものがあり、労働基準法とは異なる働き手保護の体系がある。資料の末尾にある、家内労働法の評価についての記述が、労働基準法以外の労働者保護の可能性を示唆しているので、以下引用。

「雇用」というよりは、むしろ「委託」に近い在宅勤務については、労働基準法ではなく、家内労働法の適用を考えることが素直ともいえる。
家内労働法自体は、旧態依然とした法律ではあるものの、「家内労働者」を「労働者」と明確に区別することにより、労働基準法の適用を事実上除外することによって柔軟な法規制を可能とした「センス」は評価されてよい。