• 山田久さん:スペシャルインタビュー 『日本の人事部』

正社員と非正社員の処遇格差を是正するには
http://jinjibu.jp/GuestIntvw.php?act=dtl&id=184

(先の国会のパート労働法改正について) 政府案では、週20時間以上というほかに、(1)月収9万8000円以上(2)1年以上の勤務期間があるといった条件がついています。さらに、従業員300人以下の中小企業は当面、この法案の対象外となりました。その結果、当初想定したよりも対象者は減り、10万〜20万人程度に絞られる見込みです。パート労働者は全体で約1200万人以上いますから、これでは、法案の目的は必ずしも達成できず、形だけの印象は否めません。

基本的には、今ある正社員の処遇を見直す形で、結果的に正社員と非正社員の格差をなくしていくべきだ、と思います。

(年金を正規・非正規共通の2階建形式にするとして、2階建部分は) 企業が独自で整備する年金制度や自己責任型のものに関しては、就業形態等にかかわらず、平等な税制優遇枠を設ける、という形でやっていけばいいんだと思います。

セーフティーネットを整備し直す上で、基本となる考え方とは) 「同一価値労働、同一賃金」を徹底させることだと思います。

一つの参考になるのは、オランダの「ワッセナー合意」(1982年)でしょう。

(企業のなかに、非正社員を正社員化する動きが出てきていることに関して) 景気が回復したからといって正社員を増やすというのでは、あまりにも戦略性がありません。企業の採用活動は・・・「ヒューマン・リソースアーキテクチャー」、つまり、建築物をどう作り上げるかと同じような発想が求められます。

(人事部がすべきことは) 正社員か非正社員かではなく、職種や役割に応じた評価システムを明確にして、社外でも通用するプロフェッショナルをきちんと育てていく、ということだと思います。

抜粋して引用。提言が至極まっとうで公正。日本の格差社会化へ警告と処方箋は、2003年暮れに発刊された山田氏の『賃金デフレ』(ちくま新書)で言い尽くされていた感がある。インタビューでは、オランダモデルが参照点として指摘されていると言える。ただし同じ方向性を指摘しながらも、北欧礼賛つまみ食い論者にありがちな指摘とは違って、景気回復後の安易な正社員の増大が諸手をあげて喜ぶべき事態でないことに、しっかり言及している。同一労働同一賃金の必要性も指摘されているが、これは同一労働同一処遇のことであって、賃金闘争に援用されるだけでは意味がないので注意したい。 読後、正規・非正規の処遇をすり合わせていくものとして、現実的には、短時間正社員(という言葉)の可能性をさぐるべきなのかもしれないと思った。経営側と労組の合意には、そういう言葉の着地点があるほうが議論しやすいのかも。処遇格差是正への取り組みは企業の自助努力にまかせていると限界があるので、指摘されているように、年金制度改革を切り口に手をつけていけば道筋がつく。

http://blog.goo.ne.jp/taraoaks624/e/51ce46b7141249466888664cfb49502f
八代尚宏氏、草刈隆郎氏(規制改革会議議長)へのインタビューの文字起こし。彼らをネオリベとラベリングしている諸氏は、以下のような企業の論理を放任している現状の労働市場をどうすればよいと思っているのだろうか。改革派は、派遣労働の規制に、現状の労働市場の建前が集約的に現われているとみて、そこを突破口にする見立て。2年で辞めさせる派遣労働などの期間的雇用と新卒一括採用の慣行が並存し、年齢差別が厳罰化されない現状では、就業格差が固定化するのはあきらか。

労働者派遣法では派遣社員は正社員になるための前段階と位置づけているが、間違いだ。派遣法は契約期間を3年などと制限し、引き続き働いてもらうには正社員としての雇用申し込み義務を企業に課している。だが、企業は規制から逃れるために2年で辞めさせている。