人権テーマに関する国連の特別報告者、ドゥドゥ・ディエン氏の人種差別撤廃に向けた国際的な取り組みについての講演を聴講。ディエン氏は2006年1月に日本の人種差別状況などについての調査報告書をまとめたが、同年6月に日本政府から反論を多分に含んだ書面を出されている。今回の来日は、さらなる調査と日本政府とのやりとりのための継続的フォローアップということらしい。 印象に残ったのは以下のような点。世界的に自国内の右翼だけでなく、民主主義を謳う勢力による外国人排斥がみられる傾向があり、表現の自由を逆手にとった右翼的主張の増長がみられる。表現の自由の規定は他の法律にかんがみて制定されているものであって、一定の制限があることを理解すべきもの(無制限のものではない)。右翼的な人々のお題目は、文化的なアイデンティティを守るということだが、多文化をいかに自国に組み込んでいくかということが重要。 配布された資料の中に日本政府の出した反論書があって、論点ごとに詳細な反論をしている。その反論の一例をあげると、ディエン報告書が、来日時に高い地位にある公的人物、例えば石原東京都知事と面会できなかったのは残念である、と書いていると、それに対し政府文書は、日本側の人物が会見を拒否したという誤った印象を与えかねないという点で不適切である、などと書いてもいないことに文句をつけていたりする。ディエン報告書は人権系NGOの働きかけに多くを負ってまとめられているのかもしれないが、たとえそれらの主義主張をかなり反映している面があったとしても、出された反論文書も日本政府の正当化を過剰に忖度して作成されたものという印象が強い。人権系NGOは自らの主義主張を述べるときは、バイネームで主張しているのだから、それに反論する政府側もどのような部署の誰がこういう反論を作成しているのか、責任の所在をより仔細に明らかにするシステムになっていかないものだろうか。そうすれば無理やりの反論に字数を費やすことも随分減ると思うのだが。

■www.debito.org: Special Report to UN CERD Rapporteur Mr Doudou Diene
http://www.debito.org/rapporteur.html
■日本における人種主義・人種差別の撤廃にむけて | 反差別国際運動(IMADR)
http://www.imadr.org/japan/diene/