公益法人をめぐる備忘録(2)

(1からつづき)財団法人は収益事業を行っても税率は22%の軽減税率が適用され、営利法人の30%より低い。中川氏の財団が行っていた不動産貸付業は収益事業にあたり、税制上の優遇を受けていたことになる。さらに、収益事業から得た収入を、収益事業以外の事業に支出したとすれば、収益の20%までをみなし寄付金として損金参入できる。つまり節税効果を最大限発揮できるように、財団資産への支出などをしておけば、17.6%の課税率で済む。また不動産への地価税も、政策的に導入される軽減措置とは関係なく、はじめから課税されない。地方税も優遇されていて、固定資産税なども「公益法人が設置する幼稚園、図書館、博物館、研究施設等で、直接その用に供する不動産等については」非課税となるようだ。「等」の解釈が気になるところだが。つまり公益法人は、税制上の優遇が多様にあって、いったん成立すると持続的に拡大可能ということらしい。


本来の行政の事業でもないのに、市場のチェックを受けることなく、公益性の名のもとに増殖可能なシステムが埋め込まれていれば、そこには当然利権が巣食う。公益法人が、主務官庁と癒着し、天下りの温床となっているのは、税制が大きな意味をもっているのは明らかだろう。現在公益法人は約26000にものぼるという。こうした公益法人制度を抜本的に改革するため、2002年から検討が始まり、2006年、公益法人制度改革関連3法案が成立している。これにより主務官庁制が廃止され、公益認定等委員会によって公益性が審査され、公益社団法人・公益財団法人が認定される。定を受けた法人の監督を行うのは内閣総理大臣または都道府県知事となる。一方、登記だけで法人格が得られる一般社団法人・一般財団法人の制度も創設される。


さて、ここまで書いて思い出されるのが、自民党の関係団体として名を連ねていた社団法人の数々である。あのときに公益団体について「政治活動は自由だが、政治献金ができないことになっている」と、政府の公式見解をみた。さらにそれらが下部団体をつくって政治献金するのは野放しになっていることもみた。公益性の名のもとに優遇税制を享受し、補助金助成金で肥え太ってきた公益法人が、下部組織をつくっては政治献金自民党に還流させるシステムが厳然と存在する。税で吸い上げたお金を政官業でぐるぐる循環させては増殖させていくシステムの一歯車として公益団体は機能してきた。


公益認定等委員会が既存の公益法人の公益性を審査するといっても、今後シビアな審査がなされるかどうかはわからない。さらに現時点では、公益法人改革は優遇税制の内容の改革については先送りされているようだ。公益認定等委員会は今月20日に人事が決定されていて、4月から動き出す。いままさに改革の途上にあり、これから公益性の認定を獲得するため、水面下での攻防が始まることだろう。


行政改革について:行政改革推進事務局ホームページ
http://www.gyoukaku.go.jp/about/index_koueki.html
公益法人制度改革〜政府等の動き:公益法人協会
http://www.kohokyo.or.jp/non-profit/seidokaikaku/index01.html
公益法人改革で財団法人はどう変わるのか
http://www2u.biglobe.ne.jp/~hakuzou/zaidan.htm
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