なぜ公益団体が公然と特定政党を支持できるのだろうか

8日のエントリーで、自民党機関紙の名刺広告や友好団体表彰式の内容から、自民党の関係団体をみてみた。よく考えると特定郵便局長会といった、かつて有名だった集票マシンの名がなかったのは面白い。あそこで目についたのは、特定職業の強制加入の職能集団や、国から税制上優遇を受けている公益法人・宗教法人らが、密接に自民党と関係をもっているということだ。やたらと社団法人が多かったが、○○政治連盟、○○連合会、○○協会も続出する。

なぜ公益を掲げる社団法人ら公益団体が公然と特定政党の自民党の関係団体となり、広告を出したりできるのだろうか。政治資金規正法によると、国から補助金などを受けた団体は、政治活動に関する寄付をしてはならないとされている。(→政治資金規正法22条の3・寄付の質的制限)


政治資金規正法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO194.html


気になるのは、公益法人が○○連盟だの○○連合会といった下部団体をつくり、補助金や寄付金を拠出し、それらの団体を迂回して、特定政党に献金される可能性だ。KSD事件も日歯連事件もその構図だった。 下記サイトによると「国民の税金を補助金などのかたちで受け取っている公益法人は、政治活動は自由ですが、政治献金ができないことになっています。その公益法人政治団体をつくったら自由に献金できるということが問題です」とある。下部組織としての政治団体献金する以前の公益団体の段階でも、少なくとも広告というかたちをとって、お金を回しているのは確認できた。


金権政治・機密費・KSD@佐々木憲昭Webサイト
http://www.sasaki-kensho.jp/scandal/article/scd_050208.html


公益法人は、政治献金してはいけないが、政治活動は自由だという。だが、人が動くところは金も動いているのであって、実質性で判断すれば、政府が許している論理は詭弁でしかない。実質性で判断すれば、税制上優遇されている団体が、特定政党を支援している構図はあきらかなのに、それが放置されている。下記サイトによると、公益法人の政治献金の違法性は1996年の最高裁判決によるようだ。


政治団体は趣旨に賛同した構成員で独自の会費で運営されるべき
http://ww3.tiki.ne.jp/~jmaruya/kikou001.htm


百歩ゆずって職能団体が支持政党ごとに組織されている場合なら、その団体による政治活動も、理解できる。しかし政治的に中立であるべき公職者が、とりわけその職能を前面に打ち出した団体において、丸ごと特定政党を支持するのは、どうしても違和感がある。例えば、民主党の支持団体のひとつに日本教職員組合があり、参議院比例代表に議員を選出している事実があるが、自民党の名刺広告を見ると、それに対抗するかのように全日本教職員連盟が顔を出す。全日本教職員連盟のHPを見ると、「中正不偏の教育実践を通して、美しい日本人の心を育てる」なる言葉が踊っていたりするのに、もちろん自民党支持である。これらの団体は、公務員が多数所属する団体であり、しかも内心の自由を重んじるはずの教員の団体でありながら、結局、自らの利権のために特定政党の主張に従属している。

公益法人もこれからはコンプライアンスが重視され、自ら情報開示をはかり、自団体を積極的にアナウンスしなければならない時代になってくるはずだ。業務の便宜を得る手段として政治献金を直接・間接にでも一切行わないと宣言している団体も出始めている。公益法人が特定政党を支援するのを実質的に禁止するのが一番望ましいが、団体自身に直接・間接の政治との関与を開示させるのを義務化する方法もいい。団体の性格がわかれば、市民はその団体との関わりあい方を選択できるようになる。いつのまにやら搦め手で利権の構図の共犯者になってしまっているような事態だけは、御免こうむりたい。