財政投融資とはなんだろうか(1)

小泉政権下では、道路公団民営化が主要なテーマだった初期から、郵政民営化一色にそまった後期にいたるまで、いつもそれらが議論されるとき、財政投融資という言葉が出てきた。故石井紘基議員は、日本の利権システムを財政の面から支えているのは、特別会計補助金財政投融資だ、と指摘していた。おどろおどろしい利権の巣窟を思わせる財政投融資とはなにものなのか。その頃の報道では、2001年に財政投融資改革が行われ、かつての「財投」はなくなった、などと書かれたりしていた記憶が強いが、今どのような状況にあるのだろうか。財政投融資といえば財務省の下記サイトに情報が集約されている。

財政投融資財務省
http://www.mof.go.jp/jouhou/zaitou/zaitou.htm
財政投融資リポート 2000・・・2001年の改革前の広報サイト
http://www.mof.go.jp/zaito/zaito2000.html


これらを参考にすると、財政投融資とは、税ではなく、金利を付して返済しなければならない資金(有償資金)を用い、民間では困難な大規模・超長期プロジェクトを実施したり、民間金融では困難な低金利・長期の資金を提供することにより、財政政策を効率的・効果的に行うシステム、ということになる。 つまり、民間では困難な公的事業を行う特殊法人などに有償資金を投融資する財政制度を指す。

ふと考えると、採算度外視の民間では困難な事業に、採算が求められるはずの有償資金を投入する仕組みであることに気づく。長期的な視野で見てペイすることを見越してつくられている制度のはずだが、初めから論理矛盾をはらんでいると見ることもできる。さらに財政の仕組みである以上、基本的に政府の信用に基いてお金を回すシステムであることも、おさえておいたほうがいい。政府への信用のツケ回しが起きやすい構造をはらんでいる。

もともと財政投融資は、公的な事業への投融資であって、国民生活に欠かせない電力、鉄道、道路といった基礎的インフラの整備に資金供給するため発達した。それら公的な意味合いをもつ事業を行うためつくられてきたのが特殊法人(公団とか事業団とか)ということになる。その特殊法人などの予算を、事業区分別でまとめたものが、以前調べた各種の特別会計だった。財政投融資は、その特別会計も含め、公的な意味合いをもつ事業に、有償資金が回っていく政府の制度一般を指している。

特別会計は昭和30年頃から発達したものだったが、そこにお金が流れ込む財政投融資の仕組みも、当然、その昭和30年代頃から拡大をはじめている特殊法人の設置法にはじまり、整備法、開発法と名のつく幾つもの事業別の法律がつくられてきた。そして各種事業は、閣議決定や総理決定、政省令、通達といった国会を経ない手続きだけで、かなりの部分が実行される状況が続いてきた。インフラ整備を名目に、金がバラまかれる構造が増殖していったのが目に見える。


こういった官製市場の膨張は、バブル崩壊時点までであって、それ以後は縮小したのではないか、と考えている人は多いのではないだろうか。かつては当ブログも漠然とそう考えていたことがあった。特殊法人らが非効率に運営されていることは、猪瀬直樹氏が『日本国の研究』(1996年)で大々的に追求する以前から、官僚の天下りを批判する声などは90年代に一貫してあったと思っていたからだ。それが特殊法人らの増長を封じ込めていると思いこんでいた。

だが実際には、バブル崩壊した1991年以降、郵貯資金や赤字国債発行によって、特殊法人への資金投入バブルが起こっていた。90年代、東京アクアライン諫早湾干拓事業が非難轟々でも完成にこぎつけたように、官製市場を支える財政投融資は2000年まで膨張を続けていた。こういった財政投融資計画額の推移は、2006年12月公開された「財政投融資計画の総点検について」でもみることができる。(つづく)

財政投融資計画の総点検について(財政制度等審議会財政投融資分科会)6P
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/siryou/zaitoa/zaitoa161210a.pdf