政府関係機関予算とはなんだろうか

国の予算として、一般会計と特別会計をみてきた。もうひとつあった政府関係機関予算というのをみてみよう。下記サイトによると、政府関係機関予算とは、特別の法律によって設立された政府出資の法人で、その予算を国会に提出して議決を経なければならない機関の予算だという。毎年、財務省主計局編集で、その内訳を収録した出版物が発行されている。


現在、政府関係機関予算の対象は、国民生活金融公庫住宅金融公庫農林漁業金融公庫中小企業金融公庫公営企業金融公庫沖縄振興開発金融公庫国際協力銀行日本政策投資銀行商工組合中央金庫商工中金の9機関がある。商工中金を除く8機関は、政府が資本金を全額出資している。それぞれに所管官庁があり、トップに事務次官経験者が天下ったりする縄張りとなってきた。


■国の予算の話(政府資料等普及調査会)・・・内容一部古いので上記文と違いあり
http://www.gioss.or.jp/clip/yosan3.htm


つまり、政府関係機関予算とは、政府系金融機関の予算のことだ。民間では対応が困難とされる(はずの)分野や顧客に対し、資金の貸付を行う公的金融機関であり、本来は民間金融機関の補完的役割を果たすのが筋である。政府系金融機関の成り立ちをみると、1936年に設立された商工中金以外、国民生活金融公庫(もと国民金融公庫)が1949年、住宅金融公庫が1950年、といったぐあいに、みな戦後ほぼ10年以内に設立されている。国民生活のインフラ整備を目的に国が信用保証する制度として発達してきたことがわかる。沖縄振興開発金融公庫だけが沖縄返還の年、1972年に設立されている。


政府系金融機関が役割を終えつつあるのは、住宅金融公庫を例にとるとわかりやすい。戦後まもなくは人口も急増、地方から都市への移転も急拡大したので、住宅需要は切迫していた。1945年の人口は7200万人である。ニュータウンや郊外一戸建ての需要は順調に伸びたが、同時に民間の住宅ローンも発達していった。しかし2004年、人口は12779万人をピークに減少に転じている。社会の構造は大きく変化しており、住宅需要そのものが沈滞することは明らかとなっている。ちなみに戦後すぐの平均年齢は27歳、現在は43歳である。戦後は住宅政策が貧困なまま来たことは確かだが、特定の人間を対象とした住宅金融の意義は薄れている。現在は住宅購入費用そのものを賄えるものと賄えないものが生まれている状況であり、住宅建設可能なほど富裕な人々を対象に、国が優先的に補助する根拠は薄い。弱者への住宅提供という機能が忘れ去られてしまっているのだ。ここにも制度の逆機能の一端が顔をのぞかせている。住宅金融公庫は2007年4月に廃止され、独立行政法人住宅金融支援機構となって民間金融機関の支援・補完業務を行うとされている。どの程度までコスト的にスリム化するのか監視しなければならない。


ながらく政府系金融機関民業圧迫は指摘されてきたが、1999年に特殊法人改革がなされ、いくつか統合された現状で9機関である。小泉首相(当時)が「政府系金融機関はひとつでいい」と発言したように、さらなる統廃合が進められようとしている。統廃合が強く求められるのは、それぞれの政府系金融機関が、独自の分野ごとに民業圧迫しているからだけではない。2001年の財政投融資改革までは、これらの金融機関には、特別会計と同様に、財政投融資というスキームを通した郵貯簡保の資金が流れ込んでいた。採算性を問われないのをいいことに、非効率な事業が拡大し続ける構造があった。政策金融の対GDP比率をみると、日本は2004年で17.8%で、計90.2兆円。フランスが7.5%、ドイツ3.1%。アメリカ2.8%となっている。(ソース・猪瀬直樹『持続可能なニッポンへ』)日本の官製市場ぶりを物語る数字だ。


政府系金融機関の統廃合は、「官から民へ」を掲げた小泉政権後期の重点分野となり、竹中経済財政担当相(当時)がイニシアチブをもってすすめた。2006年3月、下記のような「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」が閣議決定されている。政府の下記サイトを見ると、政府系金融改革は行政改革のトップ、以下、独立行政法人の見直し、特別会計改革、総人件費改革、資産・債務改革といった項目が続いている。


■簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律(行政改革推進事務局)
http://www.gyoukaku.go.jp/news/h18/news0602-3.html
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO047.html


今後は、公営企業金融公庫は地方債の引き受けをしているだけなので地方金融機関に移管し民営化、商工中金と政策投資銀行は完全民営化、国際協力銀行の海外経済協力業務だけJICA(国際協力機構)に引き継ぎ。残り、5機関が新しいひとつの政策金融機関に統合される予定である。2006年6月には、「政策金融改革に係る制度設計」が決定され、民業補完に徹し、政策金融の貸付残高を対GDP比半減することが目指されている。半減して約9%になったとしても、先の数字とくらべると主要先進国の中で異様に高い比率に変わりはない。


■政策金融改革に係る制度設計〜行政改革推進本部決定(首相官邸
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kinyu/seido.pdf


政府系金融機関の盛衰を眺めて思うのは、政府のプロジェクトはすべて、組織設立の当初から時限ごとの廃止を含めた見直しを念頭においてスタートする制度設計にするべきだということだ。それを担った人々が適切に他の仕事に移っていける外部労働市場のある社会が求められるのは言うまでもない。(参考下記サイト)


■FujiSankei Business i. なるほど講座/政府系金融機関の改革(2007/1/12)
http://www.business-i.jp/news/for-page/naruhodo/200701120004o.nwc