残業による割増の算定基礎・つづき

以前当ブログは「正規雇用者の働きすぎはなぜ起きるのか」として、労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)の割増賃金の算定基礎が、総額人件費を対象にしていない問題をとり上げた。あの文章では、総額人件費のうち、月例賃金部分だけが割増賃金の対象となるため、トータルなコストなどを考慮すると、結果的に残業労働が割引労働になることをみた。37条の第四項「第一項及び前項の割り増し賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当、その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない」がクセモノだった。


より厳密な話がわかったので書きとめておく。下記サイトによると、労働基準法施行規則の第19条で、賃金部分の割増の具体的な計算方法が定められている。管理職をのぞく被雇用者は皆、日給、月給、年俸の違いにかかわらず、すべていったん時間給に戻して(所定労働時間で割ってはじき出すということ)、これこれの場合はその何割増しの時間外賃金を払いなさい、といった算定法になるとのこと。


■虚妄の“自律的”労働時間制 (ニュースを斬る):NBonline(日経ビジネス オンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20070201/118220/?P=1
労働基準法施行規則
http://fish.miracle.ne.jp/adaken/law/roudokizyunho-kisoku.htm


第19条をみると、時間給に直す条文以外に、「○2  休日手当その他前項各号に含まれない賃金は、前項の計算においては、これを月によつて定められた賃金とみなす。」なる条文がある。この細目が問題だ。また37条にあった厚生労働省令の細目 も検討する必要がある。人件費のどこまでが正確な割増の算定基礎なのだろうか。


ちなみに前に挙げた久本氏の本では、厚労省の統計を使って、正規雇用者一人あたりの一ヶ月平均的労働費用の内訳を推計している(P.76)。一ヶ月の労働費用総額を100%とし、基本給の5%を諸手当、残業時間を所定内労働時間の1割弱と想定した場合、毎月、現金給与以外の労働費用に18.4%、賞与・期末手当に18.7%、残り62.9%が残業代、諸手当込みで毎月払われている給与額とされている。この割合は、日本企業の給与支払いの内訳を考えるのに、それなりに参考になる数字だと思う。