1月某日。ある大学で勉強会。ジャーナリズムの今日的課題について、二つの非常に中身の濃い報告を聞く。どちらの報告も整理された論点が次々繰り出され、なんだか圧倒されてしまう。まず少年犯罪者の実名・匿名報道をめぐる現場の取り組みについて。犯罪報道の量そのものが多くなってきている現状においても、マニュアル化して済むわけではなく、個別のケースごとに判断すべきが原則。ただ事件は不確定に起こるので、瞬時の他社動向に左右されがちな現場の空気も伝わってきた。犯罪が起きたことはニュースになるが、減ったことはニュースにならないので、宿命的に雪崩現象が起きやすい。匿名だから少年犯罪者の人権が守られる、とも言い切れないケースもあり、判断が難しい。次に、これからの時代、メディアが企業体として存在する以上、一般企業と同様のコンプライアンスが求められるようになり、言論の自由、取材の自由などの観点から見て、その自由度に制限が加えられる状況がもたらされるのではないか、という今後を展望する話。射程を広げれば、総表現社会において、報道(ジャーナリズム)とその他の表現を分けて考えるのかは妥当か、もし線引きがあるならそれはどこなのか、どういう表現ならば報道と認定されうるのか、といった論点につながっていく根源的な話。新聞特殊指定問題の経過から見ても、既存のメディア企業は当分、既存の法令・慣習を根拠に、特権性を手放さず、自らに都合のよい行動を使い分け、自らには自由を、他者には参入規制を、求めることだろう。
ところで、少年犯罪をめぐって話題になったのが少年犯罪の実数の統計。戦後といったスパンの長期トレンドでは下がっているのに違いないが、近年の状況がいまひとつ、よくわからない。90年代以降でみれば、凶悪犯は増加した後、2004年から減少に転じているというグラフもある一方、特筆するほどの変化はない(ちなみに補導人員の増加が目立つ)という見解もある。少子化が進行しているので、少年の人口当たりの犯罪者率をみなければいけないだろうが、よくわからない。


■コラム:Biz-Plus少年犯罪は増加しているのか・・・警察庁刑事局「犯罪統計書」
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/harada.cfm?i=20060724c3000c3&p=2


■世界一少年に厳しいデータ(詳細)|女子リベ  安原宏美--編集者のブログ
http://ameblo.jp/hiromiyasuhara/entry-10012353519.html