政府の社会支出の割合はどれくらいだろうか

大きな政府小さな政府」論で論点になる、社会保障給付費の規模はいったいどれほどで、その内訳はどのような対象に使われているだろうか。OECDの調査には、対国民所得、および対国内総生産GDP)の社会支出の国際比較が出てくる。これには社会支出の分野別の内訳も載っている。このデータ(Social Expenditure Database 2004)が国立社会保障・人口問題研究所で公開されていたので見てみよう。OECDの基準では、社会保障関連施設を作ったりする整備費も費用に含まれているので、実際の社会保障給付費よりも広い費用を含んで集計されているので注意したい。個人を対象とする出費だけを意味しておらず、ハコモノ込みの支出ということだ。


OECD基準による社会支出の国際比較(国立社会保障・人口問題研究所)
http://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/kyuhuhi-h14/5/No5.html


このOECDのデータは、2001年段階の数字を集約したもので、日本の社会支出は国民所得比で24%となっている。ちなみにアメリカは17%、イギリスが約29%、フランス、ドイツが約39%、スウェーデン約41%。日本の24%は国民負担率に似て、アメリカに次いで低い。EU大陸国は4割とイメージすればいいだろうか。しかもこれで実際に個人に給付される社会保障給付より広い集計ということである。対GDP比では日本は約17.6%。アメリカが約15.2%、イギリス約22.4%、ドイツ、フランス、スウェーデンいずれも30%弱といったところ。日本の社会保障名目でのお金の配分は少ないということだ。ちなみにこの2001年の一般歳出の合計額は、約83.6兆円だ。


さらに分野別の社会支出の構成の国際比較をみる。各分野は、 高齢者、 遺族、 障害者・災害業務・傷病、 保険、 家族、 積極的労働市場政策、 失業、 住宅、 生活保護、の9分野に分かれている。2001年、日本は高齢者への支出が約45%でトップ、これは年金だろう。次に約36%が保険、となっていて、これは健康保険。3番目に遺族への給付、約7%が続く。ちなみに積極的労働市場政策への支出は約1.6%でイギリスと同程度。アメリカの約1%より多いものの、スウェーデンの4.6%に遠く及ばない。日本で今行われているの社会保障給付費の分析では分野別の割合をみるときに、 分野別の分類は、 高齢、 遺族、 障害、 労働災害、 保健医療、 家族、 失業、 住宅、 生活保護その他、となっていて、積極的労働市場政策はカテゴリーとして存在していない。


また「小さな政府」論に関して、平成17年に内閣府が以下のような考察を残している。政府支出の規模、国民負担率、規制による官製市場の規模などの現状を考察、公的部門が市場で大きくなり過ぎるることで生じる歪みを説く理論を紹介し、小さな政府が必然であることを説いている。


■第1節 小さな政府とは(内閣府
http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je05/05-00201.html


この考察の詳しい検討はさておき、「大きな政府小さな政府」を考えるとき、公的部門が市場で支配力をもっている状況を、規制の数で考察している例が、構造改革論が華やかなりしころ、よくあった。ただもう少し具体的にイメージできる切り口がある。例えば、公共事業やさまざまな補助金支出の行方はどうなっているのか。次はそういった点を調べてみよう。


(ちなみに当ブログが重要視する2006年、OECDの対日審査報告書の4章「所得不平等、貧困、社会的支出」の中にも、 social spendingとして同主旨のデータが出てくるが、統計の読み方の詳細がわからないので、刊行される翻訳を待ちたい)