OECD対日経済審査報告書(2006年版)の換骨奪胎

7月の同時期に出され格差拡大を認めた経済財政白書よりはるかに重要。元報告書はPDFで203Pもあって、不平等について扱った第4章(97〜130P)を読むだけでも大変。そこでまず要旨から個人的な関心部分をメモ。自己解釈で記述の順序、文言などを変えてしまっているので、興味ある方はOECD東京のサイトなどからあたられますように。
http://www.oecdtokyo2.org/pdf/theme_pdf/macroeconomics_pdf/20060720japansurvey.pdf


財政再建のために所得税の課税ベース拡大による歳入増、消費税引き上げは不可避。政策導入時トレードオフとして考えられるべきかつ必要な対策が、公的金融機関の役割の縮小、(金融機関としての)郵政公社の民営化促進、社会保障制度改革による歳出削減、公共投資のさらなる削減。


公共投資の対GDP比はOECD平均で約3%、日本は1996年から2004年にかけて8.4%から5%に削減したがいっそうの削減を図る必要がある。既存インフラの維持費の上昇が新たな成長のための投資を締め出している。


■日本における対人口比の公共部門雇用は他の主要OECD諸国における水準を大きく下回るため、歳出削減の余地は限られている。


■不平等指標の上昇や相対的貧困拡大の原因として挙げられるのが労働市場の二重性。10年前には全労働者の19%だった非正規労働者の割合は30%以上に上昇した。パートタイム労働者の時間当たり賃金は平均してフルタイム労働者の40%にすぎない。この格差は生産性の差で説明するには大きすぎる。正規労働者に対する雇用保護の緩和など、企業の非正規労働者雇用のインセンティブを低下させる包括的アプローチが必要。


■公的社会支出の対象をひとり親などの社会的弱者により重点化すべき。2000年、働いているひとり親の半数以上が相対的貧困になるが、OECD平均は約20%、同年児童貧困率OECD平均をはるかに上回る14%、これは貧困が将来世代に再生産されることが考えられる。日本では無職のひとり親よりも就労中のひとり親における貧困率が高い。


財政問題が深刻化している折、相対的貧困縮小のために社会支出を増加する余地は限られる。現状社会支出の約4分の3は高齢者に配分されている。


■生産性を向上させるためのイノベーションをはかるには研究開発、教育の分野のシステムの改善が必要。具体的には官民の研究機関の研究者の流動性を高めることが必要。日本では研究者の平均転職回数が1回に満たない。


■教育に関して地方政府、個々の学校にさらなる自律性を与え、競争の促進を通じて成績水準の低下を反転させるべき。


■世界経済への統合を強化すべき。財、サービス、対日海外直接投資(FDI)残高、外国人労働者のさらなる流入促進、活用をはかるべき。現在合法・違法を含めた外国人労働者が日本の雇用に占める割合は約1%であり、OECD諸国の中で最も低い比率。


■今後25年間で日本の生産年齢人口は5分の1減少すると見込まれている中、女性の労働参加への負のインセンティブを撤廃すべき。年功序列賃金制度という民間部門の慣習と女性のフルタイム就労を妨げる税金・社会保障制度の側面を緩和または撤廃すべき。