民主党小沢一郎が代表選で提示する予定の基本政策案が10日余り前に読売で記事になったのが気になっている。新しいセーフティネットの確立をウリに、税制で所得税・住民税を半減させる大規模減税を実施し消費税の福祉目的税化を目指すという。所得税率を現行の「10、20、30、37%」の4段階から「5、10、20%」の3段階に簡素化し、名前を「収入税」に改める。そして所得税の諸控除を廃止。雇用政策では終身雇用制を維持し、定年を65歳に延長するとされている。


雇用政策としてとりあげられている部分については現状の延長線上にあるのでオリジナリティーはない。一番気になるのは税の簡素化の話の部分。控除の廃止は「本給+手当て」という賃金形態を発達させてきた日本の賃金構造を変える可能性がある。あらかじめ決められた率で計算された額で支給されるのが慣行になっている賞与だとか、ありとあらゆる名目をつけて肥大化している各種手当てが、本給と一括し、収入として扱われるようになるかもしれない。制度的に控除対象として賃金のなかに組み込まれてしまっている生命保険や損害保険の枠は事業者も絡むことなので、そこをどう処理するつもりなのか見物だが、税制の改変によって賃金形態の簡素化が実現するならば、それは絶対に望ましい。なぜなら企業が担ってきた福祉の部分を企業外へ吐き出させ、行政の担うべき福祉を明確化させることになるからだ。これは企業中心社会をつくってきた戦後社会の再編につながる。「再チャレンジできる社会」をキャッチフレーズに掲げるものの、その内実は正社員の増員などといってお茶を濁している安倍晋三の発想よりはよっぽどラディカルだ。


さらに減税もレーガンサッチャー新自由主義路線がようやく現実の政策として日本に適用されつつあるのだとみるならば、それほど奇異じゃない。保守二大政党の時代と形容する人もいるだろうが、無理に保守と呼ぶ必要もない。漸進的改革を目指すという意味では自民も民主いずれも革新でもあるのだから。労組に縛られがちな民主党が、守れだの変えるなだのの後ろむきなスローガンからいかにして脱却するかが問われている。もともと小沢一郎は『日本改造計画』の頃から小さな政府志向なのだし、セーフティネットも企業が担っていた部分を吐き出させれば、薄くとも広いセーフティネットが構築できるだろう。今回の小沢の政策のアイデアを提供しているブレーンは誰なのか、そこも気になる。