もって行き場のない思いを吐き出してみるのも一興。とある図書館に特定の目当ての本があるのを事前に知っていたうえで(以前に見たことがあった)、調べものに行った。マイナーな本なのであまり借り出されることはないだろうと思っていたし、借りられていたらあきらめもつくはずだった。その本は書棚にはなくて、図書館についてから検索してみると、予約取り置きの状態となっていることがわかった。目当ての情報はその本の中の数ページにあり、もともとその部分をコピーするのが目的で自分はその図書館に足を運んでいた。なので取り置き状態であるならば予約者が来ればすぐに手渡すのでコピーさせて欲しい旨を伝えた。答えは不可。理由はわからない。規則なのだという。目の前に本があるのに、事前にネット予約した人がいると、その本はその予約者のものなのだという。一瞬の参照すら許されない。これはちょっとおかしいんじゃないかとあきらめきれなくて、他の職員にも訴えたが同じく規則だと回答されてダメだった。


その本の情報を求めて足を運んでいる人間が目の前にいて、しかもその本も目の前にあって、それでいてその本の優先的な利用権は一義的にその場にはいない予約者にあるのだという。たしかに一般的には優先的利用権は予約者にあると言える。しかしもともと図書館に収蔵されている本(情報)の所有権は図書館にあるわけだし、その本はもともと広く市民に利用されることを前提に収集されているもののはずだ。であるならば図書館は広く市民に情報を提供する観点から、現時点で利用されていない本を一時的に利用させることぐらいは図書館の理念から言っても可能なはずだ。必要なら図書館利用証もしくは身分証を提供させること、そして利用の理由内容の告知を条件に、それぐらいの裁量は現場の責任で発揮できるだろう。近頃図書館本のネット予約がめちゃくちゃな状態になっているのは図書館側も自覚しているはずだ。どういう人々か分からないが、積読と同じで、とりあえず予約をしている人が激増しているのが、予約状況の貼り出された紙をときどき見かけるとわかる。


目の前にコピー機はあるのだし、あの時点で僕が本をコピーして生じる不都合は、予約者が来館して本を渡すまでのタイムラグが生じるかどうかぐらいだろう。もしもその場での本の紛失うんぬんを心配しているのなら、収蔵図書全般についてのほうを心配してほしいぐらいだ。借りたくても無くなっていることがかなりある。紛失はネットで事前に調べてもわからない。足を運んで損したことは何回もある。今回のような事態をなるべく避けるには、気になる本は念のためすべてネット予約で押さえてしまい、借りたければ借りに行く、必要なくなれば予約が解除されるまで放置して予約を失効させる・・・そういう悪意をもった利用も制度上は可能なわけで、そういう利用者とて先の規則なら優先的に保護されるので、自分本位に利用するには一番都合がいい。どういう理由で先の規則が制定されているのかわからないが、広く市民の利用に供するという図書館の原則的理念に照らして、変だなと思うことがあっても、運用の改変がなされるかどうかには、お役所仕事である以上悲観的にならざるえない。規則って言葉は実に便利だ。