ナツコ 沖縄密貿易の女王
池袋のリブロで奥野修司氏による「沖縄を知るための読書案内」と題されたミニ・トークがあったので聴講。トークは氏が沖縄を取材対象にしてから読んできた幾冊もの本の紹介とこのたび大宅賞講談社ノンフィクション賞をダブル受賞した『ナツコ』取材にまつわるエピソードと後日談。


詳細は置くとして、圧倒されたのは、沖縄の密貿易をめぐっては資料がほとんど存在せず取材は困難を極め、聞き取り取材を丹念に重ねた結果、被取材者は330人の及んだという話。沖縄在住でない人のものとは信じられないほどの取材量。沖縄とのつきあいがかれこれ30年になるという奥野氏は、はっきり理由は分からないけれども、最近沖縄の人に覇気を失ったように見える人(魂[まぶい]落としたウチナンチュ)が増えているという話をしていたのが気になった。そんな沖縄の人々にナツコというキャラクターを知ってもらって元気を出して欲しいのだという。


もうひとつ気になったのが、沖縄は平均寿命の高い県だとは知っていたけれど、びっくりするほど高齢者の寝たきりが多いという話。確かに調べてみると、介護保険の認定者率や高齢者一人当たりの介護費が高い。近代社会のリズムと沖縄のリズムの違いがアパシーを生んでいる一方で、社会は確実に変わりつつあって、沖縄の日常の移動手段にはタクシーのように近代の産物が普及し過ぎて、老人から歩く習慣を奪ってしまったりしているらしい。便利な文明の産物も自覚的に使いこなさないと自由を奪っていくという一例か。


池永永一氏による『ナツコ』評。
http://www.bunshun.co.jp/yonda/onnakaizoku/onnakaizoku.htm