シンポジウムやイベントへの参加は別ブログで細々と記録しているが、先日行った日本学術会議橘木俊詔大竹文雄の顔合わせのシンポジウムは興味深かったので特記しておきたい。聴講後の印象としては両者はさして対立していない。マスコミが針小棒大に両者の小さな論点を煽り過ぎなのだ。重要な問題として浮上している(2000年度以降あたりに特に顕著になった)若年層の格差拡大の原因を、大竹氏は「よくわからない」と発言していた。誠実な態度である感じたと同時に肩透かしにあったようにも感じてしまった。
ディスカッション中、その原因として他のパネリストから暗示されたのは日本の労働市場の特異性ということだった。でも参加者皆その分析や評価までは立ち入らないで議論は終わってしまった。科学と価値判断を分離するという姿勢が経済学者には強く現れがちで、その一例を見た思いがする。他のアカデミズムの分野との連携が期待される。というかこれこそ自分のような当事者が課題として受け取るべき論点があるのだろう。
それにしても自分のような生き方には未来がないと数字で客観的に示されてしまい、暗澹たる気持ちになった。「景気の回復してきた今、ちょうど穴ぼこに落ちるように発生した高齢者フリーターの直面している不公正さの問題は、これからの社会の課題として残るが、それが是正されるかどうかは今後の日本の労働市場のあり方次第である」というのが一定の結論だった。あくまで観察的な視点であって、今後もアカデミズムから労働市場の不公正さに踏み込んだ分析や積極的な提言がなされるのかどうかわからない。人任せではなく自分で探って行くしかないと強く感じた。この感想を書くのにも2日も経過したほど重いものがあった。つくづく未来がない。しかし自分が本当に興味をもてる課題がこのあたりにしかないのも事実。普段書いている仕事なんてやっぱり他人事の問題であって当事者意識が持てない。

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