志位・福田論戦にGJなどと反応する人間や、最近、脳にお花畑が咲いているとしか思えない社説を書いた新聞の社説子は、短いものから読めばよい。ついでに言えば、志位氏のILOレポート引用のなんと恣意的なことよ。

  • JAPAN Economic Policy Reforms: Going for Growth 2008

http://www.oecd.org/dataoecd/13/16/40172723.pdf

http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/feature/2007-11.htm

政治を読み解くマトリックス…読書から

僕が猪瀬事務所で見たニッポン大転換

いつでもそうだというわけではないが、政治上のしくみを理解するには、次の二つの質問から始めるとわかりやすい。
まず、その状況が誰に利益をもたらしているのか。
次に、その資金はどこから出ているのか。(P.200)

三者にとって、政策推進者の来歴・個人的信条は、二次的な検討対象。ある政治的な動きを、否定的に評価するにせよ、肯定的に評価するにせよ、安直にラベリングして済ますことで、自らの思考停止を招いてはならない。自戒をこめて。

正規雇用化に助成金

http://www.chunichi.co.jp/s/article/2008022101000600.html

 厚生労働省はパートや契約社員期間工を正社員として採用した中小企業に対し、奨励金を出す新制度を4月をめどにスタートさせる。企業は人件費削減のためパートなど賃金の安い非正規雇用の割合を高めている。厚労省は資金力の弱い中小企業への支援で、所得格差の是正と雇用の安定化を後押しする。
 新制度は、従業員300人以下の中小企業が対象。パート労働者ら期間を決めて雇用される有期契約労働者を正社員に登用する制度を就業規則で定めた上で、同制度を使って正社員化を実現すれば、企業にまず35万円を支給する。
 登用制度を定めてから3年以内に3人以上を正社員にする場合は、35万円の支給に加え、10人を上限に1人当たり10万円を払う。母子家庭の母親なら、奨励金は15万円にアップする。
 政府は2008年度当初予算案で新制度に約4億9000万円を盛り込み、4400人程度の正社員化支援を見込んでいる。派遣労働者は派遣会社と雇用契約を結んでいるため対象にはならない。
(共同)

新たな雇用(仕事)が創出されるようだ。お役人のための。この政策は、対象となりそうな業界を推測すれば、メディアが煽った偽装請負叩きの副産物だと思われる。結局は正規・非正規間の格差の解消に、焼け石に水どころか、市場を歪め、格差を発生させる構造を温存するだけに終わる。否、終わらない。めざとく新たな仕事(利権)が開拓できたのだから。事業所に金を注入する政策を格差是正と称する役所と、それを垂れ流す報道にただ天をあおぐしかない。この政策は正規雇用と非正規雇用の間に制度的格差があることを、はからずも暴露している。それを解消する政策を立案し、金を投じるのが、筋ではないか。正規雇用を局所的に実現してなんの意味があるのか。

それにしても、いったい誰がこんな政策を発想するのだろう。元請け企業からの持込みだろうか。いったいこの手の政策はいくつあるのだろう。政策の執行責任をなんらかのかたちで官僚に問える制度にしないと、少なくとも政策立案者や執行責任者を外部からトレースできる制度にしないと、官僚が真剣に国民のことを考えて仕事をする状況にならない。役所自体の雇用制度改革がないと無理なのだろうが。

求人広告偽装裁判

  • asahi.com:「求人広告の賃金虚偽」 沖縄出身者ら派遣会社など提訴 - 社会

http://www.asahi.com/national/update/0218/NGY200802180014.html

 愛知県豊川市の人材派遣会社と契約していた沖縄県出身の元従業員ら7人が募集広告と実際の賃金との差額の補償を求めていた問題で、7人は18日、賃金に関する詐欺行為などで精神的苦痛を受けたとして、派遣会社と派遣先の自動車部品会社を相手取り、慰謝料などとして計約3200万円の支払いを求める訴えを名古屋地裁に起こした。
 訴状などによると、7人は20〜30代の男女で、沖縄の情報誌で「月収31万円以上可」「賞与30万円以上」などとする派遣会社の求人広告を見て応募。06年5月〜07年2月に愛知に移り、派遣会社と契約して愛知県豊田市トヨタ自動車関連の同じ会社に派遣された。
 しかし、7人の月収は寮の家賃などを天引きした手取りで平均月9万〜18万円。賞与は最も高い人で額面16万円だった。
・・・(中略)・・・
 派遣会社は7人の差額請求は不当だとして、債務不存在の確認を求める訴訟を別に同地裁岡崎支部に起こしている。

求人広告における偽装、虚偽厚遇広告についての裁判がはじまっていた。職業安定法は、虚偽広告の場合、六月以下の懲役、三十万円以下の罰金を定めている。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO141.html

第六十五条  次の各号のいずれかに該当する者は、これを六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
・・・
八  虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を呈示して、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者

原告らはブログを開設していたので、以前から注目していた。

  • 違法派遣会社と闘う会(仮)

http://sanwa0vs0union.ti-da.net/

求人広告を出稿した派遣会社は、300万円の解決金を今回の原告らに提示したことがあり、広告に虚偽があったことを認めている。求人広告に掲げられていた条件で働けば稼げたはずの金額と提示された解決金には大きな差があり、原告らが提訴への動きを見せると、派遣会社は先手をうって債務不存在の確認を求める裁判を起こした。これに対して原告らは、当初の要求を貫き、提訴に至ったようだ。

この裁判は、裁判の中身そのものは損害賠償請求額をめぐる攻防になってしまうだろうが、日本の労働市場の不透明さを告発するという意味では、最近の労働裁判の中でも、かなり重要な裁判だと思う。注目に値する労働裁判はさまざまあるが、例えばいわゆる偽装請負をめぐる裁判に思うことだが、たとえ企業の行動が、労働法制の本来の立法趣旨に反しているとしても、すでにある労働法制の枠組みにおいては、合法の範囲内と判示されて終わるのではないかというケースがみられる。現在の労働法の枠組みそのものが制度疲労に陥っていることを問題提起するという意味においては意義深い裁判なのだが、訴えた人間の司法的な救済は、はかれない可能性がある。しかも裁判は既存の労働法制を手がかりに遂行されるので、改変期にある労働法制に求められている新たな価値観とは対立する、時代遅れの法理を強化してしまう主張をするしかないジレンマがある。

この裁判は、当事者が「派遣会社と闘う」と掲げているので、非正規労働者が提起して注目されているさまざまな裁判と、一見よく似ている。格差社会の底辺において不当な処遇が渦巻いているといった、わかりやすい文脈で解釈されかねない裁判ではある。派遣先企業の責任も問題にしているので、いわゆる偽装請負の責任を問う裁判とも似ている。しかし人材派遣会社の悪徳ぶりといったありがちなイメージとは別に、この裁判にはもっと普遍的な問題提起がある。企業の求人広告に嘘の情報が蔓延していて、それが当たり前のように流通してしまっている社会は、まともと言えるはずがない。日本社会ではこれまで、就労したときに募集時と実際の労働条件が違っていてもシカタガナイで済ます人間が大半ではなかったか。

弱者は不当な現実に直面しても、声をあげ不正を告発すれば、さらに窮地に陥る可能性がある。雇用者と被雇用者の関係は対等でなく、職業移転に伴なうリスクは、労働市場流動性の低い日本では、依然として高い。そのリスクにつけこむ企業行動は、そこここにあって、こういった虚偽の求人広告だけでなく、不透明な労働市場流動性を萎縮させていたがために、サービス残業を強いたり、社会保険料を負担しなかったりといった経営姿勢が、従業員からも、行政からも、見逃されてきた。求人広告に虚偽があれば、本来は詐欺と呼ぶべきで、そういう不正が市場から取り除かれるのは、単純に言って望ましい。嘘をつくのはおかしいと当然の声をあげたのが、この裁判のスタートだ。


追記:原告らが属する組合の抗議行動に参加した人のブログを発見。

  • 酒井徹の日々改善 : 「求人広告は虚偽」 トヨタ系労働者、派遣会社提訴

http://imadegawa.exblog.jp/7515123/

だいぶ昔にやったネタ備忘録。

  • Yahoo!みんなの政治 - 政治ポジションテスト 外交編

http://seiji.yahoo.co.jp/guide/position/diplomacy/

あなたは「グローバル指向のハト派」です!
【グローバル指向】
あなたは、地球規模で変化する市場環境に積極的に適応しようとする考え方を持っているようです。しかし、国際的な競争の激化や、自国の産業の空洞化などの問題にどう対処していくかが課題でしょう。
ハト派
あなたは、国際的な機関や制度による秩序を重視し、力に訴えるよりも、穏健な外交手段で国際協調に取り組む考え方を持っているようです。しかし、武力行使を受けた時など、緊急かつ危機的状態が発生した場合に迅速な対応ができるかが課題でしょう。
このグループに近い考えの政治家
吉田茂 (元首相。日独伊三国軍事同盟に反対し、英米との和平工作に奔走。サンフランシスコ平和条約を締結し、戦後日本の経済成長中心による復興路線を敷く)
石橋湛山 (元首相。加工貿易立国論による経済政策を唱え、日中米ソ平和同盟を主張。中国の周恩来首相と石橋・周共同声明を発表)
ビル・クリントン (元アメリカ大統領。軍事費を削減し、アメリカ経済の重心を情報技術<IT>・金融分野に移し、グローバリゼーションを推進)

日雇い派遣原則禁止論のデタラメさ。日雇い派遣という短期派遣契約を繰り返す働き方に問題があるわけじゃない。日雇い派遣で働くときの処遇(雇用保障)にまつわる制度に問題があるのだ。連合が打ち出した非正規労働者との連帯は、結局は労働市場をトータルに見晴らす地平に立つことはなく、ただ目前の雇用者との安逸な連帯にとどまる。それら労働運動に引きずられる政治は、不況のただ中で解雇規制を強化した愚をまた繰り返すのではないか。ホワイトカラーエグゼンプションを潰した1年前とまったく同じ文脈で、日雇い派遣禁止論が大手を振るっている。偽善的な建前と建前の議論をぶつけても、なにも生まれない。なにも生まれないどころか、衰退への消耗戦の道を突き進むだけだ。これが現実の世の中の議論だよと噛みしめては、距離のとり方に悩む。

記者クラブ無効化のために

また朝まで生テレビの話になるが、メディアに関して気になる発言があった。手嶋龍一氏が、記者クラブのような談合組織があるのは日本とアフリカの強権国家一国だけだと発言していたが、このアフリカの強権国家はどこを指すのだろうか?いずれ解明したい。 
さて記者クラブといえば、行政発の情報をヨコからタテにするだけの発表ジャーナリズムの温床だが、最近関連してつらつら思っていたことがある。グーグルニュースで行政による政策や統計の発表をメディアが記事化したものを見ていると、同内容のことを扱った記事リンクが関連記事として、いくつも並べて表示される。そうしたことが実現されるようになったことで、複数のメディアの記事を見比べられるようになり、内容が同じじゃないかとか、微妙に違うなとか、比較検証できるようになった。元共同通信編集主幹の原寿雄氏が著書『新聞記者の処世術』のなかで、発表もの記事が報道全体のほぼ9割を占めていると書いていたことがあったが、ようやくマスメディアがいかに情報の横流しだけで商売しているかが可視化されるようになってきた。違うなという部分は、記者や媒体の問題意識の反映で、それは一次情報をもとに論評として発信すべき範疇の情報だ。
もちろんグーグルニュースに参加せず撤退したメディアもあるので、単純に可視化が進んでいるとはいえない。しかし同じことを横並びでやってるマスメディアがどうしてこんなに多数あるのか、と疑問に感じる程度には可視化されてきている。ヤフーニュースでは現在、行政が情報源となったそうしたニュースを日々のトピック記事として取り上げる場合、そのニュースに対して人力で行政の情報源にリンクを貼っている。それはそれで重宝しているのだが、一方で、グーグルニュースに行政の情報源への直リンクが反映されるようにならないだろうかといつも思う。例えば、行政と同様、重要な情報源としての日本経団連のサイト発の情報は、一部グーグルニュースに対応していて、同内容を記事化したメディアの記事と同時に見比べられるようになっている。そうした動きは加速するばかりだろう。
行政はなんらかの発表をするとき、「報道資料」と称して内容を読みやすくまとめたものを同時に発表していることが多い。そういった情報源そのものがグーグルニュースに直リンクされて反映されることを望みたい。行政が検索エンジンにひっかかりやすいよう情報発信して欲しいのだ。経済財政諮問会議はサイト情報を更新するとき、RSS配信しているので、そういったシステムが多くの省庁に普及すればよい。さらに行政は、特定のキーワードを指定して登録しておけば、行政発の情報を一定の期間ごとにひとまとめにしてグーグルアラートのようなかたちで、個人に情報提供するサービスを行なうことも可能なはずだ。メールマガジンを配信している省庁があるが、それらはいずれRSS配信を行なうサイトとしても情報発信するだろう。
ともかく、発表ものをそのまま記事化するだけのメディアの存在を中抜きすることが可能な技術的環境は、すでにある。あとは行政がメディアとの共依存関係を断ち切り、市民と直接コミュニケーションする道に踏み出す意志があるかどうかだけだ。政府インターネットテレビのような編集された広報的意味合いの強い情報発信もあっていいが、まずは行政発の一次情報を個人に届ける努力をして欲しい。記者クラブを無効化するには、クラブ構成員の倫理観や良心に訴えてもあまり効果はなく、直接、行政に情報が欲しいと訴え、行政の情報発信のシステムの改革を求めることが早道だ。年頭に日本経団連が世界最先端の電子政府の構築を提言していたが、現時点でできることはいくらでもある。ここでも精神論よりもシステムの改革に目を向けたい。